なぜ、ジャンプで「ひねり」が要るのか?

5/14/2024

おととしから 1/8 オフロードを始めましたが、それ以来ずっと、「どう走ったら速いのか」「どういう走り方を目指すべきか」ずっと考えてきました。

僕は 2011年に RC レースを始めて以来、ずっと 1/10 スケールで、インドアのオフロードコースでばかり走ってました。このため広大なアウトドアのコースで、しかも、凸凹も、砂も多いコースを、どう攻略すれば良いかということについて、まとまった考えを持ってなかったのです。

ところが、最近になって「こうしたら速く走れるのではないか」と、ある程度、確信が持てる考えがまとまってきたので、書いておきたいと思います。

特にジャンプに関する考えになります。アメリカンスタイルの 1/8 スケールのオフロードトラックですから、当然ながらジャンプは特に大事です。

前置きが長くなりました。では、本題へ入ります。

【キース流・1/8 オフロード走行技術の基本】=「よどまないように、丸く走る」

大事なポイントは、車の勢い・流れを止めないで、よどまないように走ることです。このため丸いラインを狙って走ることを基本とします。

1/8 カーは車体が重い上に、アウトドアのコースはグリップが十分でないことが多く、常に十分なトラクションを期待することはできません。

丸い、減速しにくいラインを、頭の中でイメージし、そのラインを力強く走ります。

特に広いトラックでは、ついつい直線的に走ってしまいがちですが、ほぼ常に曲線的なラインを意識するのが重要です。(例外はシックスパックなどの、直線的でもクリア自体が困難な箇所です)

これが基本。これを踏まえて、ジャンプについて考えてみましょう。

ジャンプテクニックの進化ステップ

とても基本的なことから、急に発展的になるようですが、ジャンプをどうクリアすべきか、という大事なポイントに入ります。

特に「ひねり」(ウィップ) ということに関しては、ほんの10数年くらい前では、やっている人もほぼいなくて、「従来の考え方」みたいなもの自体が存在しません。オンロードのように実車の世界の理屈を持ち込めるわけでもありません。

ひねり技の重要性を説明するには、ジャンプの進化ステップから、順に説明するとわかりやすいでしょう。

ここにジャンプ (シングル) があって、ジャンプの後に、左に曲がるようなセクションがあるとします。小さなジャンプではなく、少し大きめのジャンプと考えてください。

RC カーの操縦に慣れていない初心者のひとが、最初に習うのは、「ジャンプに対して直角に、真っ直ぐに入ってジャンプする」ということでしょう。 まっすぐ踏み切らないと、簡単に転倒しますから。これが STEP 1 です。

タイミングよくスロットルの操作をしないと、ノーズが上がったままになります。着地地点の路面に合わせて着地することも、なかなか難しいものです。

しかし、この状況で真っ直ぐピョーンとジャンプしてしまうと、明らかに大回りになってしまいます。

少し上達してくると、多めに飛んだり、小さく飛んだり、飛距離を調整してジャンプできるようになります。空中の姿勢については特に、ノーズの上げ下げ (ピッチ) は操作が必要です。これが STEP 2 です。

この段階だと、さらに「ジャンプの高さ」も調整する場合もあるでしょう。「スロープに入ってから加速を多めにすると、高くジャンプできる」とか「スロープに入るまでに加速しておけば、低くジャンプできる」などです。

さらに、もう少し発展してくると、空中でひねることで向きを変え、着地してから速やかに加速するなどの工夫ができるようになります。これが STEP 3。

ここまでくると、かなり調子良く、速く走っている人もいると思います。

このイラストでは低いジャンプのように描かれているので、こんな飛び方しないかもしれませんが、ジャンプが大きければ大きいほど、また、ジャンプに繋がるコーナーが急であればあるほど、 「真っ直ぐジャンプしてひねる」という飛び方をする人が、中級者以上でも多くなっていると思います。

さて、ここで「ひねり」が出てきました。

上手にひねると、空中姿勢がカッコよくみえるので、ひねり技はとても良い、という風に見られがちです。カッコだけでなく、実際に、いろんな工夫ができるので速く走れるのも確かです。

アメリカ (少なくともロサンゼルス周辺) のインターミディエート以上の人では、ひねり技をやらない人・できない人は一人もいない、と言っても過言ではありません。誰でもやります。結構、小さなバンプでもグイグイひねる人が多いです。

僕も、インターミディエート以上のクラスに上がるためには、グイグイひねるような走り方じゃないとダメなんじゃないかな、と、最近まで考えていました。なぜなら、多くの人がそうしているからです。グイグイひねることこそが、うまくなるための、速く走るための常識であり、王道のように見えていたのです。

しかし、最近ふと気付きました。

「空中の姿勢制御だけでは足りないのではないか」、「もっと大事なことがあるのではないか」と。

なぜなら、「空中の姿勢制御がめちゃくちゃ上手い人」「スタイリッシュな走り方の人」は結構います。でも、そうした人たちが、意外とインターミディエートの上位くらいで留まっている場合も少なくないのです。その上の、プロクラスに上がるために、突き破らなければならない殻があるように思えるのです。

念の為言えば、インターミディエート上位のひとは、通常メーカーからスポンサーをもらっていますし、パッと見、 プロクラスのひとと、違いがわからないくらいですし、勝ったり負けたりいい勝負することも少なくありません。

操縦がとても上手な彼らに、何が足りないんだろう?

そこで、メイフィールドら、トップレーサーの車の挙動を注意深く観察することで、あることに気付きました。

以前は、STEP 3 から上は、「才能」とか「センス」といった、そういう漠然としたものの違いだろう、と思っていました。だから、練習で埋められない差なのではないか、と。

もちろん、才能やセンスの違いはあるでしょう。でも、技術的に明確に一つ違うことに気付きました。もうひとつ、上のステップがあることに気付きました。

ジャンプの STEP 4 は次の通り。

丸く走りながら、ジャンプする、というステップです。

このステップでは、ジャンプに対する進行方向は、必ずしも垂直ではありません。ジャンプも丸いラインに組み込まれています。

ステアリングを切りながらジャンプすることで、空中でもヨー軸周りに回転する力が生まれるので、無理にステアリングで姿勢制御して着地の向きを変える必要はありません。

ジャンプ台に対して斜めであるとしても、ステアリングを切らないで真っ直ぐジャンプするのでは、ヨー軸周りの回転は発生しないことに注意してください。

ただし、ステアリングを切りながらジャンプする、ということで、外側のタイヤが下に下がる (外側が先に着地する) ようにロールしてしまうので、着地の時点で不安定になる可能性が高まり、最悪の場合、横転します。

こうした問題を防ぐために、必要に応じて空中で姿勢制御し、安定して着地できるように姿勢を直します。逆に言えば、車が不安定にならないのであれば、空中でステアリングを切り返すなど、車をひねる必要はありません

特にビッグジャンプになるほど、ロールの影響は無視できなくなります。姿勢を直す必要が発生する可能性が高まります。

昔、ジャンプがそれほど大きくなかった時代には、ジャンプ時のロールの影響が小さかったため、ひねり技をしなくても (できなくても) 安全に速く走れた理由はここにあります。

STEP 3 では良い向きに進行するために「ひねる」こと自体が必須であったことに対して、STEP 4 では空中でのヨー軸周りの回転は自動的に発生するため、「ひねる」こと自体は必須ではありません。

しかし、STEP 4 は空中姿勢が崩れる可能性があるジャンプであるために、空中姿勢を修正する可能性が常にあります。この意味で「ひねり技」ができない場合は、丸く (ステアリングを切ったまま) ジャンプすることは危険です。STEP 4 は、空中の姿勢制御をする技術を持っていてはじめて、安全に走れる走り方なのです。この点で STEP 4 でも「ひねる技術」は必須と言えます。

尚、念のために注意しておくと、「常にステアリングを切ってジャンプするべき」と言っているのではありません。ここでは、車をよどませないような丸いラインを狙った時に、その中にジャンプが含まれているために、丸く(=ステアリングを切ったまま) ジャンプしているのです。 真っ直ぐジャンプに入り、そのまま真っ直ぐ進むようなラインで車の動きがよどまないのであれば、わざわざ丸く走り、車をひねる理由はありません。

以上を踏まえ、表題の疑問、「なぜ、ジャンプに『ひねり』が要るのか」に答えると、答えはこうなります。「ジャンプも含めた丸いラインを、安定して走るためには、空中の姿勢制御が欠かせないから」ということになります。

前の記事 次の記事
© 2024 キースの米国 R/C 情報