アメリカのストック・レースとモディファイドの考え方

2013/07/10

当サイトでも度々書いてきていますが、アメリカではストック・レースが主流です。

日本ではモディファイド一色だそうですから、ストックで走らせているというと 「じゃあ、遅いんじゃん」 と吐き捨てられそうなのですが・・・(汗)

今日は僕から見たアメリカのストックレースとモディファイドに対する考え方について書きたいと思います。

ストック・レースとは?そして、それはどのくらい人気なの?

17.5T のブラシレスモーターに、ノンタイミング ESC で走るのが 「ストック・レース」 です。

ブーストをカットしたときに、ESC がピコピコ点滅(ブリンク)するので、ブリンキー・クラスとも言われます。

ちなみにモーターは “ノンタイミング” ではないです。たいていの人が MAX まで上げてセットします。初心者の方が、「ノンタイミングだと思って、モーターの(エンドベル)タイミングまで切ってた」 という人がいましたが、その人はストレートでぶっちぎられてました (苦笑)

どのくらい人気かという参考のため、週末、サンディエゴの SDRC で行われた、アソシ主催のトップガン・シュートアウトの参加者数をみてみましょう。

それぞれのクラスの、ストッククラスと、モディファイドクラスのエントリー数は次の通りです。

種別ストック参加者数モディファイド参加者数
2WD バギー
43
19

# キャバラリ、エヴァンス
# ハートソン、ニューメダール
# テウキー、モッター
# バーネット含

SC16
5

# キャバラリ、ニューメダール含

トラック24
4

# キャバラリ、モッター参加

4WD バギー
0
11

# キャバラリ、ハートソン
# テウキー、バーネット含

参加人数を見てわかるように、ストックの方が断然人気があります。

4WD バギーだけは例外で、通常、クラブレースでも ストック 4WD バギーのレースはありません。去年の全米選手権でさえ8人程度のエントリーで、全員Aメインということになっていました。

SC は普段はもっと人気があるクラスなのですが、この日はなぜか人が集まらなかったようです。サンディエゴではなく、ロサンゼルスエリアでレースがあれば、もう少しエントリーは集まったはずと思います。

モディファイドで走る = トッププロと勝負

アメリカのビッグレースでは、モディファイドで走るというのは、トッププロの人以外にはご法度とされている雰囲気があります。「絶対に勝てない相手と勝負しても意味が無い」、「トロトロ走って大切なレースを台無しにしてしまってはならない」、ということです。

たまに、人数が揃えば1ランク落とした “スポーツマン” モディファイド・クラスが開催される場合があります。僕も参加したことはあります。しかし、基本的に “モディファイド” というと、エキスパートのクラス、しかも、かなり上位のエキスパートだけの参加クラスということになっています。

トッププロ・グループをピラミッドの頂点を支える多数のエキスパートグループ・・・

日本では “W ライアン” (ライアン・キャバラリとライアン・メイフィールド)とか “ティーボ” などしかあまり知られていないようですが、それに続く予備軍が多数います。しかもかなりのエキスパートです。

あの京商のデレック・フルタニさんでも、去年の全米選手権 2WD Mod では G メイン。元アソシのシニア・デザイナーで現在 “ミスター AVID” のカート・ウェンガーさんは E メイン。今年の IFMAR の米国代表リストに名前が載っているトレバー・アダモも E メインです。

全米のリザルトと普段のクラブレースの状況をてらして考えると、僕からみてモディファイド・クラスに出て OK な感じがするのは、だいたい全米選手権で I メイン以上の人だけ、という印象です。そのくらいの人であれば、D や E  メインくらいまでの人とならかなりいい勝負をできます。

それより遅い人は、”ストック” クラスで走らないと 「あの人、パワーのある車でバタバタ走って、何やってんの?」 という感じに見えてしまいます。

OCRC や WCRC では、平日のクラブレースでも 「あ、今日はアソシが来てるなぁ」 という日は、リーディーレースの招待選手である、キャバラリ、ハートソン、ニューメダール、テウキーや、オープンで A メインのケビン・モッター、ジミー・バーネット、ノーラン・アンダーソンなどが揃うときも珍しくありません。さらに 「TLR も来てるぞ」 というときは、ダスティン・エバンス、マット・カステラーノ、フランク・ルートといった人が出てきます。

モディファイドクラスには、平日夜のクラブレースでも、松倉選手や秋元選手などと勝負しても、勝ったり負けたりできるような神レベルの選手が多数揃うことも珍しくないのです。

そんなところで一緒にレースをするわけにはいきません。

プロドライバーもストックで

OCRC ではクラブレースでモディファイド・クラスのレースがあるとき、というのは、そういう世界を狙うような人たちが来ているときだけといってもいいくらいです。その他の人たちはどうしているか、というと、皆、ストック中心で走っています。

ピラミッドの頂点に近いトップグループの人数がそれだけいるわけですから、そのさらに予備軍はもっともっといます。

そういう人たちも、アソシ、TLR、京商といった車のメーカーのスポンサー(チャシースポンサーといいます)もいれば、パーツメーカーのスポンサーをもらって活動している人もたくさんいます。

そのくらいの人でも、普段のクラブレース・レベルではたいてい、ストック・レースに出ているのです。

ストックでしっかり基礎を作り、ビッグレースではストックで走り勝ち星を挙げ、そして初めて、いよいよモディファイドに転向していくというのが王道です。

アソシの若手ホープであるケビン・モッターは、去年全米選手権でストッククラス二冠 (バギーと SC) を獲り、JBRL のスポーツマン・ストックでシリーズ優勝 (エキスパートストックではありません・・・)。その後、秋からモディファイドに転向しました。そのくらいの輝かしい実績でやっと、ポツポツとストックを卒業していく感じです。

4月には JConcepts 主催でストックだけのビッグレース、”ストック・ナショナル” がありました。そのときの動画は 「ストックナショナル動画集」 にあります。

このときばかりは、普段モディファイドで走っているトップ選手もストックで参加していました。彼らはやはり圧倒的に速かったです。

もちろん、同じストックと言っても良いモーター、良いバッテリーを使っていたりはするんでしょう。でも、そんな違いは問題ではないくらい、走り方が違いました。腕なんです。

より遅い速度で走っている車さえうまく走らせられないのに、より速い車を上手く走らせようとしても無理な話です。

どんなスポーツでも、「おれは中級者には負けるけど、上級者には勝てるぞ」 という人はおかしいのは明らかですよね。確か “7つの習慣” にも書いてましたが、成長は連続体であり、1 から 10 のレベルに上がるには、必ず 2 や 3 のレベルにならなければならないわけです。1 から始めて、途中を飛び越えていきなり 7 や 8 のレベルになるわけにはいかないのです。

より遅い車(=ストック) で上手にできるようになってから、より難しいこと(=モディファイド) をする・・・

これは本当に当たり前すぎるほど、当たり前のことだと思っています。

かくいう僕もたまに速い車に目を慣らすとか、そういう理由でモディファイドを練習の道具に使うことはありますが、基本はやはりストックであると、最近は確信しています。

ちなみに念のため言っておきますと、アメリカでもレースに出ない人たちは、モディファイドで遊んでいる人は少なからずいます。こういうのもなんですが、そういう人たちには、僕のストックでも、ラップタイムで負けることはほとんどないです。僕はスポーツとして真面目にレースに取り組むならストックでかなり走れるまで練習したらよいと思いますが、、真面目にレースに取り組まないなら最初からモディファイドでもなんでもいいと思います。なんでも好きにやればいいと思ってます。

以上、好き勝手書きましたが、うそだろー、大げさだ、という方はぜひアメリカのレースに実際に参加してみてください!
なるほど、ストックも面白いぞ、いいぞ、と思っていただけると思います

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