R/C カーで使われるネジの種類
最終更新日: 2023年8月20日
ここでは、1/8 スケールまたは 1/10 スケールのオフロード R/C カーキットを組み立てる際に、よく使われるネジについて説明します。
ネジの形状
一般的な競技用 R/C カー・キットの組み立てで使われるネジ (screws, スクリュー) の形状は大きく分けて「キャップスクリュー」と「セットスクリュー」の2種類あります。
「キャップ・スクリュー」 (cap screw) というのは、ネジ頭に六角形の穴があり、六角レンチやヘックスドライバーなどのツールで回すタイプのネジのことです。広く見かける「プラス」とか「マイナス」の形のネジは R/C カーではほとんど使われません。
キャップスクリューは、ネジ頭の形状によっていくつかの種類があります。そのうち R/C カーでは次の3種類のキャップスクリューがよく使われます。
- ボタンヘッド・キャップスクリュー
- フラットヘッド・キャップスクリュー
- ソケットヘッド・キャップスクリュー
それぞれ、どのようなものか、後で説明します。
「セット・スクリュー」 というのは、ネジ頭が無いタイプのネジです。
それでは、それぞれ少し詳しく見ていきましょう。
ボタンヘッド・キャップスクリュー
ボタンヘッド・キャップスクリュー (Button Head Cap Screws) は、上の写真のようにネジ頭の部分に丸みのあるネジです。 BHCS と略されて表記されることもあります。
例えば、アソシの組み立てマニュアルをみると、次のように記載されています。
フラットヘッド・キャップスクリュー
フラットヘッド・キャップスクリュー (Flat Head Cap Screws) は、上の写真のようにネジ頭の部分が平らになっているネジです。 FHCS と表記されることもあります。
フラットヘッドと呼ぶ他に、カウンターサンク (Countersunk) とも言います。
日本語では「皿ネジ」とも呼ばれます。
シャーシの底面など、出来上がりを平らにしたいところで使われます。
ソケットヘッド・キャップスクリュー
ソケットヘッド・キャップスクリュー (Socket Head Cap Screws) は、上の写真のように、少し大きめの円柱形のネジ頭がついたタイプのネジです。省略形は SHCS です。
セット・スクリュー
セット・スクリュー (Set Screws) というのは、ネジ頭が無いタイプのネジです。
セットスクリューはピニオンギアをモーターの軸に固定したりドライブシャフトを受けるカプラーを固定したりするのに、主に使われます。
日本語では「イモネジ」とも呼ばれます。正式名称は「六角穴付き止めねじ」。
ネジの寸法
「メトリック」と「スタンダード」
アメリカでは、ネジのサイズ指定が mm (ミリメートル) 単位のネジと inch (インチ) 単位のネジの両方のネジが多く流通しています。
ミリメートル基準のネジのグループをメトリック(Metric) といい、インチ基準のネジのグループをスタンダード (Standard) といいます。
R/C カーの組み立てでは、以前は主にアメリカのキットではスタンダードのネジが使われていました。 しかし、現在は R/C カーで使われるネジとしてはメトリックが主流です。
アメリカのホームセンター (The Home Depot や Lowe's など) では、ネジの売り場に行けば、今でも「スタンダード」のネジの売り場の方が広い場合が多いです。その意味で確かに「スタンダード」がスタンダード (標準) といえると思います。
メトリックの寸法の表記
メトリックの場合はネジの寸法は単純に (ネジ径)x(長さ) で記載します。
例えば、ネジ径 (ネジの太さ) が 3mm で長さが 10mm のネジのサイズは M3x10 と記載します。ネジ径の前の M の文字はメトリックであること (つまりミリメートル表記) を表しています。
スタンダードの寸法の表記
スタンダードの場合は、ネジの寸法は #(ネジサイズ)-(ネジのピッチ)x(長さ) で記載するのが一般的です。
ネジサイズ (Screw Size) はネジ径を表す番号で、R/Cカーで使われる位のサイズでは、次のようになります。
ネジサイズ | インチ | mm |
---|---|---|
#2 | 3/32" | 2.18mm |
#3 | 7/64" | 2.51mm |
#4 | 7/64" | 2.84mm |
#5 | 1/8" | 3.18mm |
つまり、「#2 のネジ」なら、ネジ径が 3/32" (約 2.18mm) になります。
ネジのピッチは、1インチの中にネジ山がいくつあるか、という数でネジの細かさを表します。つまり、#4-40 のネジならば、直径 7/64" で、ねじ山が 1 インチ中に 40 個切れているようなネジということになります。
「長さ」はもちろん、ネジの長さで、単位はインチとします。
従って、上の写真のネジ (LOSA6236 #2-56x1/2) は、直径が 3/32 インチ、ピッチが 56 [Threads Per Inch]、長さが 1/2 インチであるボタンヘッドのネジ、ということになります。
ネジの長さ
ネジの長さは、次のように測ります。
FHCS ではネジ頭から、ネジの先端までを「ネジの長さ」とします。BHCS と SHCS では、ネジ頭の最下部からネジの先端までが「ネジの長さ」です。
これは「ネジで締結されるモノの中に、ネジが入り込む長さ」と等しくなります。
その他のネジ
R/C カーのパーツでは、上記の他に各種の必要に応じて、寸法だけで簡単に表せない、様々な種類のネジが一部に使われる場合があります。
例えば、この写真のネジは TLR245000 の Droop Screw ですが、ネジ側にセットスクリューのように六角の穴があり、さらにネジ頭側にも六角の穴があります。
こうしたネジ類は、通常、数も多くならないので、各メーカーのパーツ番号や名称で識別するので十分と思います。
キャップスクリューを回すツール
ヘックスドライバー
キャップスクリューを回すには通常はヘックスドライバーと呼ばれる、先端が六角形になっているドライバーを使います。ヘックス (Hex) は六角形の意味です。
ドライバーのハンドル (柄) の部分と先端が一体となっている、基本的なヘックスドライバーの他、ドライバーの先端部分 (ドライバービット) を交換できるタイプもあります。
ドライバービットは、手で回すためのハンドルに取り付ける他、下の写真のように電動のツールに取り付けて使うことができ便利です。
L 字型の六角レンチでも、ネジを回すことは可能ですが、ネジを回すための場所を取り不便です。また、パワーツールが使えないのも不便です。R/C カーの制作にはヘックスドライバーを使うことをお勧めします。
ボールエンド・ヘックスドライバー
下の写真の下のヘックスドライバーでは、先端が球状に加工されています。
こうした形状のヘックスドライバーを、ボールエンド・ヘックスドライバーといいます。
ボールエンド・ヘックスドライバーを使うと、ネジに対して斜めからネジを回すことができるため、特に狭い場所での作業に便利です。
ネジのサイズとヘックスドライバーのサイズ
同じ太さのネジ (Cap Screws) の場合、ボタンヘッド (BHCS) やフラットヘッド (FHCS) よりも、ソケットヘッド (SHCS) の方が、少し太めのヘックスドライバーを使います。
R/C カーの制作でよく使われる主なメトリックネジの太さ/形状と、ヘックスドライバーの太さの関係は次のようになります。
ネジ サイズ |
ネジの種類 | |||
---|---|---|---|---|
BHCS FHCS ![]() ![]() |
SHCS![]() |
Set Screw ![]() |
||
M2.5 | 1.5mm | 2mm | 1.3mm 0.05" |
|
M3 | 2mm | 2.5mm | 1.5mm | |
M4 | 2.5mm | 3mm | 2mm | |
M5 | 3mm | 4mm | 2.5mm |
BHCS と FHCS はサイズが同じであれば、使用するドライバーは同じです。
M2.5 のセットスクリューで使う M1.3 は通常使用せずに、0.05 インチのヘックスドライバーを使います。
M5 の BHCS、FHCS、SHCS は、車種に寄るので絶対に使わないとは言いませんが、私の知っている限り、通常は使用されません。M5 のセットスクリューは稀に使用されることはあるようです (Mugen MBX8 の説明書で見かけました)。
R/C カーの組み立てに必要なツールの種類は、R/C カーのキットによって違います。ここでは主なものを紹介しています。 詳しくは R/C カーキットの組み立て説明書を確認してください。
ネジの材質と強度区分
ネジの材質
R/C カーのネジの材質には、基本的には鉄 (合金鋼, Alloy) が使われます。
1/10 スケールの R/C オフロードカーの強度があまり重要でない場所では、合金鋼の他、軽量化や耐腐食性向上のためにチタン合金 (Ti-6Al-4V.「64 チタン」とも言います) やアルミのネジが使われる場合もあります。
アルミのネジは簡単に曲がってしまうので、使う時には注意が必要です。その他、ステンレスや真鍮などのネジも R/C カー向けとして販売されていますが、こちらも強度の問題があるので使用する際には十分注意が必要です。例えば真鍮 C2801 では 0.2% 耐力で 167N/mm2 です。
後述の高強度ボルトはクロムモリブデン鋼 (SCM435) という材質です。
ネジの強度区分
上の写真のネジでは、ネジ頭に「12.9」という数字が刻印されています。これは強度区分を示しています。(強度区分は英語では class とか grade などと表記される場合があります)
強度区分は引張強さと降伏点応力の大きさを示しています。代表的な強度区分としては 4.8、8.8、10.9、12.9 などの区分があり、数字が大きい方が強度が高いことを示しています。要は数字が大きい方が、塑性変形しない (曲がっても戻る) ことを示しています。
強度区分 4.8 は、引張強さが 400 N/mm2 で耐力がその8割の320 N/mm2 であることを示しています。8.8、10.9、12.9 も同様です。
一般的に「高強度ネジ」というと強度区分 8.8 以上のネジを指します。最近はアソシやTLRなどでは、強度区分 12.9 のネジを使用するのが主流になってきています。
最近のアソシのキットに含まれるネジは強度区分12.9です。一方、チタン合金 (Ti-6Al-4V) の耐力は 825N/mm2 程度です。強度区分 10.9 の耐力は (1000*0.9=900) 900N/mm2 ですから、チタン合金の強度は合金鋼でいえば 10.9 弱程度といえます。 従ってキットの合金鋼よりも、チタン合金に変えた方が強度は下がります。チタン合金にして強度を上げた、と勘違いしないよう注意しましょう。
私の場合、刻印がなく強度区分不明の合金ネジは、なるべく使わないようにしています。明確に YFS 12.9 の刻印のあるネジのみを極力使うようにしています。YFS は台湾の六角穴付きボルト専門会社で、品質に定評があります。品質不明のネジを使うと、精度や強度がおかしい場合があり、トラブルや不安定感などの原因になります。
以上、ここでは R/C カー制作時に使用する主なネジ (六角穴付きネジ) について説明しました。